DIYでバッテリーを自宅で交換したあとエンジンが振動したと相談を受けたことがあります。
整備工場ではわりと多い事例ではないでしょうか。
原因は車に備わってる学習機能がリセットされてしまったことがほとんどです。
今回はバッテリーを交換するさいに注意するべきことや、振動が出てしまったときの対処法についてのお話です。
車のバッテリーを交換後に振動が出る原因
自動車にはECUと呼ばれるエンジンを制御するコンピューターがあり、バッテリーの端子を外してしまうとECUに記録されていた内容が消えてしまうことがあります。
冒頭でも述べましたが、それまで学習してきたエンジンの回転数や点火時期などの補正値が消えてしまい、制御がうまくいかなくなります。
つまり時間をかけて覚えてきた学習内容が消えてしまうことでエンジンをうまく制御できなくなっているのです。
とくに多いのがエンジンをかけた途端にエンジン回転が高くなり、そのあと止まりそうになるくらいエンジン回転が低くなったり、また回転が上がるという状態です。
これは「ハンチング」と言われる状態ですが、コンピューターがエンジンの回転数を決められずに高くしたり低くしたりと迷っている状態です。
ほかにも、信号待ちなどでドライブレンジに入れたままブレーキペダルで止まっていると、エンジン回転が低すぎて「ブルブル」とか「ガタガタ」と振動することもあります。
エンジンをかけた状態にもさまざまな条件があり、それぞれの状況に合わせた制御が細かくリアルタイムで行われています。
・エンジンが冷えている
・パーキングレンジに入れている
・エアコンを入れている
・ドライブレンジに入れている
・ヘッドライトやワイパーを作動させている
ざっと述べただけでもこれだけの要素があり、ECU(コンピューター)はそれぞれの条件にあった制御をしています。
そのためエンジン回転が「低すぎず高すぎず」のちょうどいい状態を保持するためにはそれまでの運転条件を記録して学習していく必要があります。
これらの記録はバッテリーと車が接続された状態であればエンジンを止めても消えませんが、バッテリーを外し一定時間が経過すると初期化されます。
バッテリーを交換するさいには、ECUの学習内容が消えてしまわないように学習内容をバックアップしておく必要があるのです。
メモリバックアップの重要性
整備工場やカーディーラーでは、車のバッテリーを交換するときにメモリーバックアップを必ず行います。
バッテリーが車と切り離された状態でも、別の電源を車に接続しておくことで記録されていたメモリーが消えないようにしています。
まれに整備工場などでバッテリー交換を依頼したにもかかわらずバックアップメモリが消えてしまっていることもあります。
おそらくバックアップの電源が車とうまく接続できていないままバッテリーを外してしまったことが原因です。
エンジンから振動が出たり、パワーウィンドウのオート機能がきかなくなっていることもあります。
ほかにもカーナビやカーオーディオの時計や記憶した内容が消えてしまったという事例もあります。
バックアップに失敗して車が振動したらどうする?
メモリーバックアップがうまくできないままでバッテリー端子を外してしまった場合、エンジンを再始動すると振動が出ることがあります。
とくに走行距離が10万キロを超えている場合は補正値の調整幅が大きくなっていたぶん、エンジンの調子も悪くなってしまいます。
再学習させれば復帰できることも多い
その場合、エンジンをしばらくかけたままにすることで学習機能が働き、補正が行われてしだいに振動も解消されることが多いです。
なかにはエンジンが止まりそうになるくらいの大きな振動や、アイドリングできずにエンジンが止まってしまうこともあります。
その場合は、実際に車を走らせながらより多くの情報をコンピューターに学習させることで補正を急がせることができます。
アイドルストップ車も要注意
アイドルストップ車のなかには、アイドルストップを行った回数をカウントしている車種も多く、再始動ができなくなるトラブルを防止しています。
これらの車両では、バッテリーを交換してもコンピューター内では古いバッテリーを使い続けていることになっていて、アイドルストップ機能が復帰しないことがあります。
その場合、あえてバッテリーの端子を外してしまい、コンピューターの学習内容を初期化するという工程が必要になる車種もあります。
最悪、ディーラーいきになるかも
バッテリーを交換したときにメモリーバックアップをしないままで一定時間以上放置してしまうと、車種によっては自力で補正ができなくなることもあります。
たとえば日産車の一部であった事例ですが、長期間バッテリーが上がったままで放置していたことで補正機能が追いつかなくなったこともあります。
その場合「急速TAS学習」という、専用のテスターで補正を行わなければならないケースもありました。
今では汎用のテスターでも「急速TAS学習」ができるものも増えましたが、汎用のテスターではどうしてもうまく再学習ができなかったこともありました。
その場合は日産ディーラーの専用テスター「コンサルト」で学習を行うことになりました。
まとめ
・コンピューターの学習内容が消えてしまったことでエンジン制御が一時的にうまく行かなくなっている。
・エンジンを掛けた状態で一定時間経過すると学習機能がはたらき補正される。
・実際に走行させながらエアコンなどの電気負荷をかけてみることで学習が早まることもある。
・走行距離が多い車の場合は学習に時間がかかることがある。
・自己学習がうまくいかない場合はディーラーで専用のオフボードテスターを使用する場合もある。